関東平野北西部、前橋堆積盆地の上部更新統から完新統に関わる諸問題
矢口裕之
財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団発行 2011年3月
研究紀要 第29号 21-40頁から転載をWeb版として改訂
関東平野北西部、前橋堆積盆地の上部更新統から完新統に関わる諸問題
The Points of Upper Pleistocene ? Holocene Stratigraphy at Maebashi Basin,Northwestern Kanto Area,Central Japan.

矢口裕之
YAGUCHI,Hiroyuki

1.はじめに

2.火山灰土とテフラ層序の問題
(1)中部ローム層と上部ローム層の層序区分
(2)中部ローム層のテフラ
(3)上部ローム層のテフラ

(4)黒色土層のテフラ
(5)テフラの命名に関する問題
(6)テフラの年代

3.利根川扇状地とその周辺地域の更新統及び完新統の層序
(1)前橋砂礫層
(2)前橋岩なだれ堆積物
(3)元利根川礫層
(4)陣場岩なだれ堆積物
(5)広瀬川砂礫層
(6)前橋泥炭層
(7)高崎泥流堆積物

(8)行幸田岩なだれ堆積物
(9)徳丸ラハール堆積物
(10)総社砂層
(11)前橋台地層

4.遺跡に見られる堆積物の層序
(1)高崎台地とその周辺
(2)前橋台地とその周辺
(3)赤城火山南麓

5.議論
  謝辞

参考文献・Abstract

要旨

 関東平野北西部に位置する前橋堆積盆地には、浅間火山や榛名火山からもたらされた後期更新世から完新世のテフラや火山灰土が堆積している。これらは下位より関東ローム層の中部ローム層、上部ローム層及び黒土層に区分される。
 利根川が形成した扇状地には河成堆積物や火山噴出物が堆積し、それらは下位より前橋砂礫層、前橋岩なだれ堆積物、元利根川礫層、陣場岩なだれ堆積物、広瀬川礫層、前橋泥炭層、高崎泥流堆積物、行幸田岩なだれ堆積物、徳丸ラハール堆積物、総社砂層、前橋台地層に区分される。
 扇状地を構成する上部更新統から完新統は、火山活動や気候変動の影響を強く受けて形成された。その成因は氷期に起きた火山活動による植生破壊と気候の温暖化や湿潤化によるものである。
 利根川流域を領域とした旧石器人や縄文人は、河川と火山麓の森林がもたらす食糧資源を獲得することで生活範囲を拡大した。後氷期の扇状地の形成は、それらの生活基盤を左右したので遺跡数の増減と気候変化に相関が生まれた。

キーワード
対象時代 旧石器時代 縄文時代
対象地域 中部日本
研究対象 上部更新統 完新統 テフラ

追記
カラー