空間線量率計で食品の放射線量の簡易測定は可能だろうか?

(その1 遮蔽材で測定ボックスをつくる)
 東日本大震災によって発生した福島第一原子力発電所から拡散した放射性物質の状況を把握するために、国産の空間線量率計を購入しました。これは、身近な放射線量の状況を把握するためと簡易測定で食品に含まれる放射線量の把握ができないだろうか?という興味から購入に踏み切ったものです。
 購入したものは、株式会社テクノエーピーの製品でTC100SというCsI(TI)シンチレーション検出器を搭載した小型の高感度線量率計です。製品のスペックについてはこちらを参照ください。
 購入の契機になったのは、ニコニコ生放送で放映された「緊急報告 あなたの食べ物は大丈夫?〜放射線による食品汚染の実態に迫る〜」2011年10月21日
 出演(敬称略) 津田大介(ジャーナリスト)野尻美保子(高エネルギー加速器研究機構・教授) 早野龍五(東京大学・教授)勝川俊雄 (三重大学・准教授)戎谷徹也(大地を守る会・放射能対策特命担当) を視聴したことが動機です。
 この番組ではガンマ線を遮蔽すれば市販の高感度線量計でも簡易測定が可能になるといった内容であったため、実際に挑戦してみることにしました。
 11月11日に線量計が届きました。ガンマ線のスペクトルを表示する機能をオプションで付けたので少し高額になりましたが、これは核種を分離して放射線量を計測するために必要な機能です。食品に含まれる微量の放射線量を測定するためには、空間中のガンマ線を遮蔽する測定室にあたる箱が必要になります。1kgの粉体を収納するとある程度の大きさが必要になります。
 ガンマ線の遮蔽材料としては、鉛、鉄、コンクリート、水などがあげられます。また、ガンマ線の種類によって遮蔽の厚さも変わるので、ガンマ線と遮蔽材の関係は社団法人日本アイソトープ協会編『アイソトープ手帳』11版卓上版で調べました。
 ガンマ線の遮蔽には鉛が最も優れていますが、鉛は有毒なので表面を完全に覆わないと利用しにくい素材です。また、コンクリートや水は安価で購入できますが、遮蔽にはかなりの厚さが必要になります。今回は、鉄を利用してガンマ線の遮蔽を行うことを検討しました。
 実際に測定を行うリビングの平均的な線量は0.04〜0.07μSv/hなので1/10程度の遮蔽が必要です。このために必要な鉄は放射性セシウムで70mm以上の厚さが必要です。
 今回の測定では50mm前後の鋼鉄のブロックを組み合わせて測定ボックスを作ることにしました。鉄素材の小売業者は、ネット上でいくつか見つかりましたが、地元の業者から購入しました。材料についてはこちらを参照してください。
 実験をしながら複数回にわけて鉄ブロックを購入したので、少し変則的な数のブロックになりました。大きさをいくつかに分けてブロックを注文すれば、組み合わせによって様々な測定室を構築することが可能です。今回は50mmの鋼材や22mmの鋼鉄板を重ねて箱を完成させました。
 遮蔽材料の鋼鉄板が宅急便で届きました。重量は二回に分けて合計で100kgに近いです。鉄素材は汚れているので、濡れぞうきんで汚れを拭き取って、さび止めのを施します。線量率計のUSBケーブルを通す穴は、鉄をカットするためのサンダーを使って刻みを入れました。
開梱して掃除した鉄ブロックを積んでいきます。まずは土台部分で厚みは50mm、測定スペースは66mmです。
 鉄のブロックは4段積んで50mm×4段で、測定室は140mm程度の深さがあります。これで測定ボックスが完成しました。
その2汚染土を使って検量線をつくる
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